生産地別!お茶っ葉ガイド
日本茶は、製茶方法だけでなく、生産される地域や風土によっても、風味や味が異なるものになります。ここでは、生産地別にそれぞれの日本茶の歴史と、特徴をご説明いたします。
宇治茶
主に京都府南部で生産される日本茶のことをいいます。現在では、純粋に京都府内で生産された茶葉だけでなく、京都府内産茶葉が50パーセント、後の50パーセントが滋賀県・奈良県・三重県のいずれかの産地のブレンドであることが宇治茶の定義となっているようです。
鎌倉時代に、京都市右京区高山寺の明恵上人が、栄西禅師から中国から持ち帰った茶の種子を分け与えられました。その種子を栂ノ尾・深瀬の地にまき、その後宇治黄檗山万福寺の門前へ分ち植えたのが宇治茶の始まりだといわれています。浅蒸し・弱火で自然の風味を重視したさわやかな味が特徴です。また、製造後、冷蔵庫に保管する間に熟成され、甘みが増すという特徴もあります。
静岡茶
牧の原台地とその周辺地域を中心に、静岡県で生産されている日本茶のことをいいます。首都圏に近い茶産地であることから、関東地方に住む方にはなじみ深いお茶かもしれません。
鎌倉時代に、駿河国栃沢(現静岡市郊外)に生まれた聖一国師が中国からお茶の種を持ち帰り、出生地の近くの足久保にまいたのが静岡県のお茶の始まりとされています。
全般的に、やや深蒸しで火香の強いのが特徴です。火香が強いことで、急須でお茶を入れる時に短時間で抽出でき、高温のお湯でも渋みが強くならないというメリットがあります。
八女茶
福岡県八女地域で生産されている日本茶のことをいいます。直射日光を避けて育てた茶葉を、蒸して揉みながら乾燥させて作った、玉露の生産地としても非常に有名です。
鎌倉時代に、中国から茶の種子を持ち帰った栄西禅師が筑前背振山にまき、さらに博多に聖福寺を建立して、境内にも茶を植えたことが八女茶の始まりだとされています。
玉露は、うまみ成分であるアミノ酸が多量に含まれており、ふくよかな香りと甘くまろやかな味わいが特徴です。
知覧茶
鹿児島県知覧町などを中心に栽培している日本茶のことをいいます。鹿児島県にある南さつま農業協同組合が、地域ブランドとして出願し、2006年10月27日に認定されました。
平家の落人が、北部山間地の手蓑で茶栽培をはじめたことが知覧茶の起源であるといわれています。本格的な栽培は、明治5年に山野を開墾して始まりました。
全体的に深・中蒸し茶が多く、やや強めの火香があることが特徴です。きわめて宇治茶に近く、若々しくさわやかな香りが漂います。
狭山茶
埼玉県入間市、狭山市、飯能市、所沢市、川越市、日高市を中心に生産されている日本茶のことをいいます。コクと甘みのある味が有名です。
鎌倉時代に、明恵上人が栄西禅師から茶の種子を分け与えられ、「武蔵河越の地」に栽植したのが狭山茶の起源とされています。本格的な茶業は、江戸時代から始まりました。
茶の生産地としては最も北にあたり、その涼しい気候から厚みのある葉になります。抽出しやすく、味と色が濃い深蒸しなのが特徴です。
伊勢茶
三重県で栽培している日本茶のことを言います。三重県は、栽培面積・生産量・生産額が、静岡県、鹿児島県についで全国3位です。
弘法大師が唐から伝えたというお茶の樹を、四日市市水沢にある寺の僧が植え、栽培したのが起源だとされています。
伊勢茶の中では、特にアミノ酸の一種であるテアニンを多く含んだ「かぶせ茶」が有名です。葉肉が厚く、香りが濃厚なのが特徴です。